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「エネルギーインフラと生活者の未来 - 未来洞察ワークショップ」参加者の声


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「未来洞察」は、多様な未来像を描くための創造的な思考法です。DLX DESIGN ACADEMYは、未来洞察の研究・開発の第一人者鷲田祐一先生(一橋大学大学院経営管理研究科 教授、データ・デザイン研究センター長)をお迎えして、未来洞察ワークショップを行いました。


従来の発想法は、統計や実績データをもとに、過去や現在の延長線上に未来を描く「ライナー(直線的)な思考」が中心であるのに対し、未来洞察は、偶然に見える兆しや一見無関係な情報を手がかりに、従来の発想にとらわれない未来を構想することで、思考の幅を広げます。


今回は、エネルギーインフラと生活をテーマとしました。2050年に向けて、日本のエネルギーインフラが大きな転換点を迎えている今、現状を背景に、電力を「つくる」「届ける」「使い継ぐ」などの視点から、社会の未来像の構想に挑みました。


* * *


2日間にわたる「エネルギーインフラと生活者の未来 - 未来洞察ワークショップ」に参加しました。参加のきっかけは、講師の鷲田祐一先生の著書『デザイン経営』を読み、「未来洞察」に関する内容に興味を持ったことでした。


現状の延長線上にはない「非連続な複数の未来」を描き、思考の枠を広げるプロセスを振り返ります。それは単なる知識の習得ではなく、日頃の情報収集から未来を構想するまでの「新たな思考回路」を、自分の中にインストールするような体験でした。


1.「正解」の呪縛を解き、強制発想を楽しむ

ワークショップは、一見関係なさそうな150ものニュースや事象(マテリアル)から、強制的に5つの未来シナリオを作成するという事前課題から始まりました。当初、私はこの課題に対し、「仕事の合間に片手間で作成したシナリオに十分な完成度があるだろうか」という不安を感じていました。


しかし、講義を通じてそのプレッシャーは気がつくと自然に解消されていきました。 講師から明かされたのは、「じっくりではなく素早く読み込むこと」が重要であり、「従来の積み上げ型の技術予測手法であっても10数年先の的中率は決して高いわけではなく、むしろ直感を重視するこのようなホライゾンスキャニングの方が有効な場合もある」という視点でした。


この言葉により、「未来を高い確率で当てる方法を持ち帰らなければならない」という肩の荷が下りました。論理的な正しさ(正解)よりも、どれだけ自由に発想できるか。

常識のバイアスを外し、直感的に情報を結合させる「強制発想」のプロセスそのものを楽しむことで、これまでにないほど前向きで軽やかな気持ちでワークに取り組むことができました。


2.「網羅性」を捨て、混沌を受け入れる

実務の現場では、発想や計画に抜け漏れがないかが重視されることが多いと思います。そのため、事前課題の個人ワークからチームごとのシナリオをまとめ上げる1日目の終わりに、私は「この手法で導き出す未来に、網羅感はあるのか?」と講師に質問しました。


講師の回答は明確に「網羅感はない」というものでした。 もし未来を網羅的に予測できるなら、誰でも正解の未来に辿り着けます。イノベーションの種は多くの場合、網羅的な分析からはこぼれ落ちる「死角(ブラインドスポット)」や「混沌」の中に潜んでいます。


「未来を考えるとき、網羅性を意識することに意味はない」。この気づきは、不確実性を恐れず、むしろ楽しむためのマインドセットとして、私の中に深く刻まれました。


3.「つながらないもの」に向き合う思考の価値

2日目のハイライトは、「個人の幸福論(哲学)」と「エネルギーインフラ(物理技術)」という、一見すると水と油のようなテーマを掛け合わせるワークでした。


論理的に考えれば「無関係」と切り捨ててしまいそうなこの組み合わせに、私のチームは苦戦しました。しかし、この「つながらなさ」を無理やり接続しようと試みるプロセスにこそ、未来洞察の本質があります。 安易に諦めてしまうのではなく、一見無関係なものを接続しようと真剣に悩み、思索を巡らせる。その「つながらなさ」と向き合い続ける思考体験そのものにこそ価値があり、何よりの収穫でした。


4.「多様性」があるからこそ描ける未来

本ワークショップ全体を通じて実感したのが、組織における「多様性」の重要性です。 初日の時点で作成された各チームのシナリオの評価結果は、講師の経験の中では比較的分散傾向が見られるものでした。これは参加者のバックグラウンドが多種多様であったことが大きな要因の1つのようでした。


これを同一組織内の同質なメンバーだけで行っていたらどうなっていたか。似通った価値観によるバイアスがかかり、初日の時点で「想定内の未来」しか描けなかったように思います。 複雑に絡み合った未来を読み解くために必要なのは、一人の優れた分析力ではなく、異質な視点を持つメンバーによる「多様性」である。このことを肌感覚として理解できたことは、今回持ち帰るべき大きな成果でした。


最後に、個人的な気づきについて触れさせてください。


実は、ワークショップが始まる直前まで、私は少し緊張していました。これまで参加した多くのワークショップで、出自の異なるメンバーと議論し、チームが同じ方向に進む難しさを感じていました。「今回もうまく進められるだろうか」という不安は、開始直前まで私の心の中に潜んでいました。


しかし、未来洞察という「正解を求めない」方法論と、講師が作り出した「失敗を許容する雰囲気」、そして「多様性」から得られる発想のおかげで、その緊張感は自然に消え、前向きなエネルギーへと変わっていきました。この「対話への自信」は、今回得られた財産の1つであり、次につながる重要な体験だったと感じています。


今回インストールされた「未来への思考法」と、「不完全さを受け入れる勇気」。これらを武器に、今後のビジネス変革や共創の場へ、恐れずに飛び込んでいきたいと思います。


パーティクルドローイング合同会社

デザイナー

高瀬 裕治さん


<プログラム概要>


プログラムタイトル:エネルギーインフラと生活者の未来 - 未来洞察ワークショップ


講師:鷲田祐一 一橋大学大学院経営管理研究科 教授(データ・デザイン研究センター長)


開催日時:2025年 11月14日(金)、21日(金) 10:00-18:00


会場:ARCH(虎ノ門ヒルズビジネスセンター)


内容:こちらをご覧ください。






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