「4070 - DLX デザイン先導イノベーション プログラム」(2025)参加者の声(2)
- Sayuri Ozawa
- 8月8日
- 読了時間: 4分

気候危機—— これまでのライフスタイルや社会構造が生み出した持続不可能な現状は、未来世代に深刻な代償をもたらすことが明らかになっています。こうした状況に対し、デザインという手段を用いて立ち向かおうとする先駆的な試み—— それが「プログラム4070」でした。
このプログラムでは、全12回のセッション(約2カ月半)を通じて、参加者がデザインプロセスの全体像を体系的に学びました。また、「行動変容を促す力」というデザインの特性を活かし、気候危機という困難な社会課題に取り組む視点と手法を身につけていきました。さらに、DLXのリサーチャー、研究者、教員によるオムニバス形式の講義を通じて、DLXデザインラボの知と実践に深く触れる機会となりました。
以下に、参加者の中から、舟橋采里さん(住友商事株式会社)に執筆いただいた感想文を掲載します。どうぞお読みください。
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「どうすれば新しい価値を生み出し続けられるのだろうか?」
新規事業開発や投資の業務に日々携わるなかで、そんな問いを持つことが増えてきました。
そんな中で出会ったのが、デザインという思考法。当社ではまだ広く浸透しているとは言えない領域ですが、だからこそ、今取り組む価値があると感じました。気候変動という大きなテーマにも惹かれ、本プログラムへの参加を決めました。
この3ヶ月を通じて私が感じたことは、大きく3つあります。
①「問い」が、チームの背骨だった
普段の仕事では「そもそも解決すべき問題は何か?」という問いを曖昧にしたまま、つい解決策から走り出してしまうことがよくある気がします。組織の中で共通認識があるように見えても、実際には個々の持つ課題や温度感にズレがある。
今回も、同じアイデアを持っているはずなのに、チームメンバーそれぞれがプロトタイプを作ったら全く違うものが出来上がった、なんて場面もありました。途中何度も方向性に迷い、悩みました。でもそんなとき支えになったのが、最初に立てた How Might We...? の問い。「この問いに、私たちは応えられているだろうか?」と立ち戻ることで、問いがチームの背骨のように機能し、アイデアの一貫性やチーム内の意思統一を保つ軸となってくれました。
問いに居続けることで、むしろ行ったり来たりと迷うこともできた。そんな感覚もあったように感じます。
②思考に「かたち」を与えるということ
ビジュアルの重要性は、想像以上でした。
印象的だったのは、最終発表の場で手書きのスケッチが推奨されていたこと。生成AIでのビジュアライズも試しましたが、最後に相手に伝わりやすかったのはやはり手で描いたものでした。
また途中チームで議論する際も、お互いの考えを明確にするにはビジュアルが必須でした。最初は絵を描いたり、段ボールなどを使ってプロトタイプを作ることにハードルを感じましたが、実際にかたちにしてみると、自分の中でも言語化されていなかった思考や意図が整理され、相手にも伝わる感覚が確かにありました。
③「おもしろい」は、ちゃんと価値になる
アイデアを決めるとき私たちが大事にした軸は「おもしろいかどうか」でした。
最初は「チームとしてわくわくするものにしよう」と話していたのに、いざ進めていくと徐々に落ち着いた案へと向かっていってしまう空気もありました。大人同士、引き返すのって案外むずかしいなと。
でも最終的には、「やっぱり最初おもしろいと思った方に戻ろう」とチームでえいやと舵を切りました。結果としてその案も粗削りなところはありましたが、不思議と、自分たちがいちばん納得できたように思います。
そしてその納得感があったからこそ、「おもしろさ」はちゃんと相手にも伝わる価値になり得る、、そんな手応えも感じられました。
DLXで体験したのは「チームで悩み、問いに居続け、手を動かしながら、価値をかたちにしていく」プロセスでした。それは決して効率的とは言えないかもしれないが、その不確かさの中にこそ、これからの事業づくりのヒントがあるように思います。
この学びを、大企業という現場にも少しずつ持ち帰って広げていきたい。そしてこれからも、答えを探すより先に、問いに立ち返ることを大事にしていきたいと思います。
改めて、DLXの講師陣や運営の皆さま、そして4070参加メンバーの皆さま、刺激的な学びの機会を本当にありがとうございました!
住友商事株式会社 新事業投資部
舟橋采里さん
<プログラム概要>
プログラムタイトル:4070 - DLX デザイン先導イノベーション プログラム
講師:DLXデザインラボ 教員、研究者、デザイナー一同
開催日時:2025年
5月9日~7月18日(全12セッション)
会場:DLX(目黒区駒場 東京大学リサーチキャンパス)
内容:こちらをご覧ください。



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