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「4070 - DLX デザイン先導イノベーション プログラム」(2025)参加者の声(3)

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気候危機—— これまでのライフスタイルや社会構造が生み出した持続不可能な現状は、未来世代に深刻な代償をもたらすことが明らかになっています。こうした状況に対し、デザインという手段を用いて立ち向かおうとする先駆的な試み—— それが「プログラム4070」でした。


このプログラムでは、全12回のセッション(約2カ月半)を通じて、参加者がデザインプロセスの全体像を体系的に学びました。また、「行動変容を促す力」というデザインの特性を活かし、気候危機という困難な社会課題に取り組む視点と手法を身につけていきました。さらに、DLXのリサーチャー、研究者、教員によるオムニバス形式の講義を通じて、DLXデザインラボの知と実践に深く触れる機会となりました。


以下に、参加者の中から、UXデザイナーの田中純子さんに執筆いただいた感想文を掲載します。どうぞお読みください。


* * *


「問いを立てる勇気」と「アイデアを捨てる覚悟」

         ——DLXで学んだこと


■この講座で得たもの


DLXデザインアカデミーは、私にとって「問いを立てる姿勢」と「選択する勇気」を再発見する場でした。

私はフリーランスのUXデザイナーとして、普段はクライアントのWebサービスの立ち上げや、UX/UIの設計に携わっています。

今回のProgramme 4070では、いわゆるデザインシンキングで期待される具体の手法を知るというより、実践的な学びを得たいという期待がありました。普段のクライアントワークで扱わない大きな社会課題にバイアスなく自由に取り組める場として、異なる視点や問いに出会えると思ったのです。

そしてその期待通りProgramme 4070 では、一般的なデザインシンキングの射程である人間中心設計を超え、未来世代や非人間の視点も含む複雑な文脈に向き合うことで、「問いの立て方」に対して新たな気づきを得ることができました。


初めての訪問でドキドキ
初めての訪問でドキドキ

■”How Might We…?” 問いを立てるという行為の本質


適切な問いを立てることは、技法ではなく、姿勢であると実感しました。

プロジェクト初期はProject Ladderのフレームワークを通じて、何度も問い直し、行き詰まり、立ち止まるプロセスが続きました。仮説検証サイクルを回すプロセスそのものには慣れていたつもりながら、問いやその解決策を考える際、いつもの考え方である ”人間中心設計” を軸とすると簡単に行き詰まりました。プログラムのテーマ Climate Change では、どうしても「人間の欲望」と「地球や生物の限界」が衝突する部分に向き合うからです。


一連のセッションを通して、手を動かし続けながら問いを「育てる」という感覚が生まれました。ビジネスでよくやる“答えを出すための問い”では失いがちな感覚であり、特に気候変動という複雑で解のないテーマに向き合う中でこそ、重要な姿勢だと感じました。


大きなボードでideationしたり、Lo-Fiプロトタイプを作ったり、とにかく手を動かす
大きなボードでideationしたり、Lo-Fiプロトタイプを作ったり、とにかく手を動かす

■選択と対話が生み出すデザイン


選択する勇気と、対話を重ねるプロセスこそが、最終的にデザインの本質を形作るのだと思います。

ワークショップでは様々な講師の方や、時には通りがかりのデザインラボの研究員の方に訪れていただき、毎週驚くほど多様な角度から異なるフィードバックをいただきました。

私たちのチームは何度も方向転換(ピボット)をしながら最終的なアイデアにたどり着きましたが、最終プレゼンで経緯を話すと、講評者の今井先生からは「そんな(小さな範囲)のはピボットのうちに入らないですよ(笑)」とバッサリ。

「ある建築設計事務所ではたった一度のコンペに出す一つのアイデアのために、600のアイデアを考えたんですよ」


600のアイデアから599を捨て、たった一つを選び抜く勇気。


単なる発想量ではなく、アイデアを選び抜くまでに「もうこれ以上ベストな選択肢はない、我々はやりきった」と言えるまで深く問い、実践したプロセスがよいデザインを作りあげることを学びました。


最終アイデアに辿り着くまでにボツになったプロトタイプ(の一部)
最終アイデアに辿り着くまでにボツになったプロトタイプ(の一部)

■デザインとは何かを再定義した経験


デザインとは、見える成果物だけでなく、未知の領域に飛び込み、意味ある問いを見出していくプロセスそのものでした。

普段の仕事で私はビジュアルやプロダクトのアウトプットではなく上流のUXやサービス設計を行っているため、日々の現場では「”デザイン”している感」の実感が薄く思うこともありました。


しかし今回のプロジェクトで、未知のドメインに踏み込み、リサーチし、フィードバックを受けながら選択と試行錯誤を繰り返す経験を通して、「私なりのデザインの価値」をあらためて再確認することができました。


■今後に向けての問い

このようなワークショップの場では「問いの質をどう育てるか」という設計自体が、プログラム全体の鍵になると感じました。

4070 Programme のワークショップは毎回新たな気づきを得られる環境が整っていて、実験的で自由な空気がありました。その一方で、毎度新しい角度から学びながら実践をしていくため、問いやアイデアを深めきれたかというと、もっとやれたなあと思う部分もありました。チームの議論が停滞したときにいかに突破口を見つけるか、受け取ったフィードバックをアイデアにどう活かせばいいのか、省みることが多くありました。


今後、他者と問いを交わすための時間や構造がより明確に設計されることで、さらなる学びが生まれるのではないかと期待しています。


■”How Might ’I’…?” いかにして私は今回の講座から得た学びを活かすのか?

この講座の経験は、私の実務や人生の姿勢そのものに還元されていくと確信しています。

仕事でもプライベートでも、人生において私たちは常に複数の選択肢(=アイデア)の中で迷うタイミングがあります。大切なのは、仮説を持ち、問い直し、行動し続けること。今回の12週間は、その力を育て直す貴重な機会でした。

貴重な場を設計し、支えてくださったすべての方に感謝申し上げます。


UXデザイナー

田中純子さん



<プログラム概要>


プログラムタイトル:4070 - DLX デザイン先導イノベーション プログラム

講師:DLXデザインラボ 教員、研究者、デザイナー一同

開催日時:2025年

5月9日~7月18日(全12セッション)

会場:DLX(目黒区駒場 東京大学リサーチキャンパス)


内容:こちらをご覧ください。







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