top of page

「4070 - DLX デザイン先導イノベーション プログラム」(2025)参加者の声(1)

ree

気候危機—— これまでのライフスタイルや社会構造が生み出した持続不可能な現状は、未来世代に深刻な代償をもたらすことが明らかになっています。こうした状況に対し、デザインという手段を用いて立ち向かおうとする先駆的な試み—— それが「プログラム4070」でした。


このプログラムでは、全12回のセッション(約2カ月半)を通じて、参加者がデザインプロセスの全体像を体系的に学びました。また、「行動変容を促す力」というデザインの特性を活かし、気候危機という困難な社会課題に取り組む視点と手法を身につけていきました。さらに、DLXのリサーチャー、研究者、教員によるオムニバス形式の講義を通じて、DLXデザインラボの知と実践に深く触れる機会となりました。


このように、実践的で多層的な学びを構成したプログラムを実施するのは、DLXデザインアカデミーにとっても初の試みでしたが、参加者全員とともに12セッションを完遂できたことは、何よりの成果でした。参加者の皆様は、お仕事との両立に苦労しているようでしたが、大変お疲れさまでした。

以下に、参加者の中から、網屋祐輔さん(東洋製罐株式会社)に執筆いただいた感想文を掲載します。どうぞお読みください。


--


挑戦できる環境は、苦しい

挑戦とは、どこまでも前向きな言葉のはずだった。

新製品、新規事業、イノベーション。誰もがその旗を振る。しかし、現場に立つと、その言葉は容赦なく牙を剥く。

成果が出ない日々。不安や焦り。やるべきことは山積みなのに、正解は見えない。

日常業務に追われながら、あらゆるリスクとストレスを抱えて突き進む。

これが、私にとっての”挑戦”だった。そんな私にとって、”4070”は救いだった。


リズミカルな講義

Peatixで情報が公開された翌日、上司からセミナーを紹介頂いた。

過去に手に取った田川欣哉氏の書籍に提唱されていたBTC型組織(ビジネス、テクノロジー、クリエイティブの融合)の考え方に深く共感していた。

技術畑に身を置く人間ほど、「デザイン」や「人」に向き合う視座を忘れてしまう。だからこそ、あえて飛び込もうと思った。

4070では、常に座学と実践がセットだった。

取り組む内容について、概念や意味をしっかり説明してくれる座学に守られながら、その後すぐに問いを立て、プロトタイピングに進む。

ここに、私が今まで知らなかった”リズム”があった。


着想は、ぼんやり始まる

内倉悠氏のセッションで語られた「機会探索」は印象的だった。

“なぜ?”と思った瞬間に湧き起こるモヤモヤ。

でも多くの思考や感情はあっという間に、意識の底に沈んでいく。

それをすくい上げるために、ピープルマップやコンテクストマップを駆使する。

業務では日々データと向き合っている。だが、数字化されない”人の感覚”にまで手を伸ばすには、これまでのスキルだけでは足りないと痛感した。見落としてしまいがちになる「違和感」こそ出発点である、という感覚を忘れたくない。


できない、は幻想

「絵心がないから、スケッチなんて無理」

そう思っていた私に、檜垣万里子氏のセッションは優しく、そして鮮烈なカウンターだった。

20年通った書道教室の時と同じように、基本の動作で腕を温めることから始める。スケッチとは、練習の積み重ねであり、“才能”の問題ではない。そう言ってくれたことが、何よりも心強かった。

目の前のものをスケッチしようとすると、意外な構造に初めて気が付き、目で見ているつもりでも、全然見えていないことを実感した。

技術や知識が正解を生むと考えていて私は、観察こそが創造の源であることを初めて知った。


言語化できないものにこそ、価値がある

左右田智美氏の「エクスペリエンスデザイン」は、まさに言語化が困難な領域だった。

「日常の興奮」をどう設計するか。様々な取り組みの根幹にあるのは、膨大なネットワークと経験のストックと理解した。

「ぶっ刺さる体験を探し続けること」この言葉は、私の中で静かに響き続けている。


粗さは、可能性

高山直人氏の「プロトタイピング」は、プロトタイプの価値観をひっくり返した。

精度の高い議論は、完成された資料からは生まれない。粗いプロトタイプこそが未来を切り拓く力を持つ。その力とは、①未完成だからこそ、本音が引き出される②共有に有効で、共通の“絵”ができる③ワクワクが伝播する④作りながら考えることができる

プレゼン資料だけで議論し、煮詰まってばかりだった原因をようやく理解した。


考えながら手を動かす、しなやかに問いに戻る

世の中には、解決が困難な課題が山積している。

心から解決したい問いに出会ったとき、我武者羅な挑戦は必須ではない。

「失敗」ではなく「違うことが明らかになった」と実験的に試行錯誤を繰り返すことが、本当に課題を解決することにつながる。その視点を4070は教えてくれた。


最後に

4070を通じて出会えた仲間、講師、運営の皆様に心から感謝いたします。

また、どこかでお会いできる日を楽しみにしています。


東洋製罐株式会社 テクニカルセンター

網屋祐輔さん



<プログラム概要>


プログラムタイトル:4070 - DLX デザイン先導イノベーション プログラム


講師:DLXデザインラボ 教員、研究者、デザイナー一同


開催日時:2025年

5月9日~7月18日(全12セッション)


会場:DLX(目黒区駒場 東京大学リサーチキャンパス)


内容:こちらをご覧ください。







コメント


bottom of page